実現が急がれるスマートファクトリーとは | 3つのメリットと求められる背景を解説

国際的に高い評価を得てきた日本のものづくり。しかし、今、技能労働者の人手不足が深刻化しています。市場環境も激変し、生き残るための国際競争力強化も急務です。

こうした課題を解決するため、今、ものづくりの現場ではスマートファクトリー化が進んでいます。今回はスマートファクトリーについてご紹介します。

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Index

スマートファクトリーとは何か。

スマートファクトリーとは、ドイツ政府が提唱した「インダストリー4.0」を具現化する工場のこと。ひと言で言えば、「データの活用・分析により製造管理の高度化を実現する工場」です。スマートファクトリーでは、データを収集するためのセンサーとネットワークによるIoTで、ものづくり現場のあらゆる状態がデジタル化され、可視化されます。

スマートファクトリーの定義

スマートファクトリーは、工場や会社全体でPDCAを高速で回し課題の発見・改善、新たな価値の創出などを効率的に行うための仕組みです。工場の全レベルから情報を収集・集約し、現場のあらゆる状態を可視化します。

データ連携がスマートファクトリー化のポイント

情報が分断されている状態を、スマートファクトリー化で、すべてのデータを収集・連携

一般的に工場のネットワークは、最下位のセンサーレベルから、フィールドレベル、コントローラーレベル、そして最上位のコンピューターレベルまで、四つの階層で構成されています。工場内の機器がIoT化され、そのすべてがつながっている状態が理想です。

階層の違う情報を一元管理する

工場間のネットワークなど、工場の設備をコントロールするPLC館のネットワーク、ラインの装置を制御するネットワーク、装置内の機器などの制御をするネットワーク、これから製造実績データとして一元管理

スマートファクトリーの守備範囲は、上記のラインや生産現場内の最適化だけにはとどまりません。エンジニアリングチェーンとサプライチェーンの各部門で持つデータを、大きな枠組みで一元的に管理して全体の最適化を図ります。

すべての情報を一元管理するスマートファクトリー

製造実績データと、エンジニアリングチェーン、サプライチェーンのデータを連携

エンジニアリングチェーンは、製品設計から生産後の保守・改善まで、製品開発部門での一連の業務プロセス。一方サプライチェーンは、製品の原材料・部品の調達から販売に至るまでの一連の業務プロセス。このふたつの業務プロセスに関わるすべてのデータも可視化することで、製造業の管理レイヤーのすべてをカバーすることが可能になります。

スマートファクトリーが求められる背景

スマートファクトリーが必要になった最大の理由は、産業構造の大きな変化です。個々人の技術・技能など、日本の製造業の強みは属人的なものでした。しかし、少子高齢化に伴って労働人口が減少する一方の日本では、人手不足が深刻化するとともに、技能・技術の継承が難しくなり、かつてのメリットが逆にデメリットになりました。

一方、欧米では、製品の品質を人に依存しないために、水平分業体制や作業の標準化、システム化などを、早くから製造の現場に導入し、ものづくりの自動化・効率化を進めていました。市場のグローバル化が進むと、この両者の違いが競争力の差となって如実に表れました。日本では人材の数的確保が難しくなるとともに、働く人の価値観の変容もあって、昔のような働き方や製品クオリティーが担保できなくなっています。スマートファクトリーは、このような停滞状況を打破し、国際競争力を高める手段として期待されています。

スマートファクトリーのメリット

コンプライアンスの厳しい製造業では、現場の作業者が記録すべき項目が多数あります。従来のように紙帳票で収集していたのでは、マネジメント層の手元に届くまで何日も、場合によっては何週間もかかり、即時性に劣ります。検索性も悪く、中には手書きの文字が汚くて、判読できないことすらあります。

スマートファクトリーでは、ものづくりに関わるあらゆるデータが可視化され、集約することが可能です。電子化されたデータは“資産”として活用でき、各種データは、適切なPSI(生産・販売・在庫)計画の立案・運用など、全体最適化のために必要不可欠な判断材料になるのです。

一元化・可視化された情報が集まる

ものづくりに関するあらゆるデータの収集と分析を可能にするスマートファクトリー。では具体的にはどんなメリットがあるのでしょうか。スマートファクトリーのメリットは大きく分けると以下の3つと考えられます。

  • 現場の課題解決
  • 工場やサプライチェーン、エンジニアリングチェーンの最適化
  • 現場プロセス変革による新しい価値の創造

1.現場の課題解決

スムーズな技術継承で人材育成がスピード化

熟練者の暗黙知をデータ化し、新人技術者にスムーズに継承

スマートファクトリーでは、属人的なスキルやノウハウを「暗黙知」から「形式知」へとナレッジ化することができます。これにより、動画マニュアルを制作したり、教育プログラムをつくったりできるようになるので、一人ひとりの勘や経験などに基づいていた熟練技術者のスキルを、経験の少ない技術者にスムーズに継承することが可能になります。個人間の技術のギャップを埋めやすくなるとも言えます。

自動制御・搬送で省人化とコストダウン

単純労働を自動化し、省人化を実現、

ロボットやAGV(無人搬送車)などによる自動制御・自動搬送を適切な箇所に導入することが可能となります。人員配置を最適化し、単純労働を自動化できることにより、人手不足の課題を解決。省人化や省力化、効率化を通じて、ものづくりのコストダウンを実現できます。

また、余剰となった人員は、新たな工程改善に取り組んでもらい、改善・成長サイクルにさらに回していくことが可能になります。集約され、一元管理できるようになった各種データに基づいて、生産ラインの最適化や、設備の故障予測による予防保全などが可能になります。

2.工場やサプライチェーン、エンジニアリングチェーンの最適化

回答スピードアップで機会損失を防ぐ

情報の蓄積量が増えると、実現可能な生産計画立案が可能に

クライアントからの問い合わせに対し、標準的な納期や原価はわかっていても本当にそれが実現可能なのか根拠を得られないため、回答を先延ばしにして、機会損失につながってしまうことがあるでしょう。スマートファクトリーなら、生産拠点やサプライヤーの状況など、自社の各工場の情報を同じ条件で一元的に管理し、さらに多くの情報が蓄積されていけば、過去の経験に基づく生産計画を立案しやすくなり、回答スピードもアップ。機会損失を防ぐことにもつながります。

製品開発のスピードアップ

スマートファクトリーは、製品開発を加速させることができます。例えば限られた母数の実験データではなく、工場内で取得した膨大な量産データをビッグデータとして研究開発部門にフィードバックすることで、研究開発期間の圧縮が可能になります。

また、PoC(Proof of Concept:概念実証)に際しても、量産データを活用することで、実プロジェクトまでの期間を短縮することも可能になります。あるいは、歩留まりや生産効率のデータを上流工程にフィードバックすることで、より生産効率の高い製品設計を促し、より競争力の高い製品開発を実現することもできます。

3.現場プロセス変革による新しい価値の創出

高付加価値の発見とブランド化

データ分析によってわかった「優秀な生産者」+「加工技術の匠」=付加価値の高い製品の誕生

データの分析が、ものづくりのブランド化につながることもあります。情報が一元管理されていると、高品質だった製品の履歴をたどることができます。「どうやら優秀な生産者の人がいる」「工場内の匠と呼ばれている人が仕上げ作業をしている」などの情報を得られることがあるかもしれません。その場合は、生産者や加工者を知ることで新たな価値を生むことができるかもしれません。

また、履歴をたどることが容易になれば、原材料情報などをつねに把握することができます。製品にトラブルが発生したときでも、原因箇所の究明が早くなりますし、適切に次の手を打つことができます。

新たなスキルを備える人材の育成

省力化や省人化、効率化によって一人当たりの労働時間が削減されます。そうして生まれた時間を人材育成に充てることも、新たな価値を生むことになるでしょう。一般的に日本のものづくりの現場では、技能者は多能工、作業者は単能工というイメージもありますが、余剰時間を利用してハイブリッドの「T型人材」を育成するなど、将来につながる新たな人材を創出することが可能になります。

社内でのセミナー実施が困難であれば、コンサルティング企業など外部パートナーを活用する手もあります。また、学び直しの機会を設け、大学で新たな視点を得てもらう、といったことも可能でしょう。

まとめ

今回はスマートファクトリーとは何か、なぜ今導入する必要があるのか、導入するとどんなメリットがあるかについてご紹介してきました。次回は、スマートファクトリーの導入方法や、導入にあたっての課題、課題の解消法などをご紹介します。

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