ビジネスで求められる労働生産性とは?労働生産性が重視される理由&向上させる方法をご紹介

公開日:2020.10.07

エンジニアの働き方
 

日本はOECD(経済協力開発機構)加盟諸国の中で2018年の一人当たりの労働生産性が20位とかなり低い水準にあり、近年特に強く労働生産性の向上が叫ばれています。今回は労働生産性とは一体何か、どうすれば向上するのか、エンジニアの方に向けて解説していきます。

労働生産性とはなにか?

労働生産性の定義について

労働生産性とは、生産するにあたって、生産に必要な諸要素がどれだけ効果的に使われたかということを割合で示したものです。

たとえば最先端機器を導入しても、オペレーターが未熟であったり、教育にコストがかかり運用が効率的に行われなければ、労働生産性が低いということになります。

労働生産性を向上させるにはシステムの導入とともに、効率的な運用を組み合わせる必要があり、そのための教育コストなども含めて計算する必要があります。

労働生産性の種類について

労働生産性を測定するためには複数の方法があります。

主なものは生産物の大きさや重さ、個数などの物量を単位とする「物的生産性」と、企業における売上総利益などの金額ベースの価値であり付加価値を単位とする「付加価値生産性」です。

物的生産性

物的生産性は、生産物の量を、どのくらいの労働量で作ったかを計算するものです。生産能力や生産効率の時系列的な推移を表す場合などに使用します。たとえば、10人で作業して10個作った場合、一人当たりの物的生産性は1(個/人)となります。

生産量を単位としている物的生産性は、経済情勢によって変動する物価に影響されないという特徴があります。

付加価値生産性

付加価値とは、生産額から外部購入した費用や経費を除いた売上総利益を指します。原材料などを購入し製品を製造・販売する際に、新たに付け加えた価値を金額で表したものを付加価値として測定します。この付加価値をどのくらいの労働量で作ったかを計算するのが付加価値生産性です。

たとえば10人で作業して100,000円の売上総利益が出た場合、一人当たりの付加価値生産性は10,000(円/人)となります。

付加価値生産性は、物的生産性と違って物価の影響を受けてしまう点が問題です。他方、労働や資本に分配される売上総利益をベースに算出されるため、労働生産性が上がった結果をどう分配するかという問題を考える上では重要な指標とされています。

日本で労働生産性が重要視される理由

前述にあるように、日本の労働生産性はOEDC(経済協力開発機構)加盟諸国36カ国の中でも20位と低い水準にあるため、向上を目指す必要がありますが、これ以外にも日本で労働生産性が重要視されるポイントが2つあります。

高齢化による労働人口の減少

日本は少子高齢化が進み、未婚率の上昇、出生率の低下もあいまって、今後も労働人口は減少の一途をたどることが避けられません。

経済産業省は2030年には79万人ものIT人材の不足を予測しており、このまま労働生産性を改善せずに人口減少が進めば、いずれ危機的な状況を招く未来が訪れてしまいます。

仮に今から出生率が回復しても、生まれた子どもたちが労働人口に到達するには20年以上の時間が必要になるため、労働生産性の低さを解決しなければ、生産力不足による経済力の低下を避けることが難しくなります。

企業でのグローバル競争が激化

近年、ネットワークの高度な発達によって世界規模でのビジネスが展開される時代になり、グローバル競争が激化しています。競争相手が世界規模になると、安く若い労働力を大量に投入できる国や企業に対し、従来どおりでは競争力が不足してしまいます。

日本の労働力は安くなく、さらに労働人口が減少し続けています。労働生産性を向上させ、少ない人員で効率よく生産することで、競争力を強化する必要があります。

労働生産性を向上させる方法

上記のとおり、特に日本では労働生産性が重視されているわけですが、実際に労働生産性を向上させるには、一人ひとりが効率よく働き成果を出すことが一番重要です。労働生産性を向上させる方法は複数あります。もちろん単純なスキルアップでも労働生産性は向上しますが、タスク管理や集中力の強化といった方法でも向上可能です。

ここからはエンジニアの皆さんが労働生産性を向上させる方法についてご紹介します。

タスク管理

現状の把握とタスクの管理は、労働生産性を向上させるために効果的な方法です。

たとえば、「明日は重要な開発Aを先に着手し、朝から3時間で完成させ、その後開発Bに着手、明日中に●●まで仕上げる。開発CとDについては優先度が低いため明後日着手する」といった形でタスクの重要度や期限をきちんと管理し、いつまでに処理するべきタスクがどれくらいあるのかを把握すると、自然と各タスクにかけられる時間が決まり、時間内に終わらせるための目標が見えてきます。

タスクの管理は、最初は精度が低く時間の目測があわないことも少なくありません。しかし、繰り返すことによって自分の処理能力が把握でき、工数管理の精度が上がってきます。

また、自分がどの部分に弱みを持っているのかも進捗の遅れから客観視できるため、スキル向上における重点を意識することにも繋がります。

集中力を上げる

労働生産性と集中力は密接に関係しています。

集中できない状態ではなかなか作業が進まず、時間ばかり浪費してしまいますが、作業に集中することで作業効率がアップし、時間あたりの労働生産性と仕事の精度が高くなります。

集中力を高めるためにはテクニックを活用しましょう。次に、いくつかおすすめの集中力向上テクニックをご紹介します。

ポモドーロテクニック

25分の作業と5分の休憩を繰り返し、時間の区切りと緩急を作ることで、長時間の集中を効率よく維持するテクニックです。プログラマの場合、25分間集中して開発し、5分休憩、というサイクルを繰り返すイメージになります。

休憩時間になったら必ず作業の手を止めて休憩を挟むことで、自覚していない神経の疲れを回復し、集中力を維持します。

ルーティンワーク

特にスポーツの世界でよく聞くルーティンワークは、決まった流れの動作を行うことで、「これをすれば集中する」と脳に覚えこませた事前動作のことです。ルーティンワークをすることで、短時間で高い集中状態に入り作業効率が上がるため、労働生産性の向上が期待できます。

事前動作は人によって異なりますが、たとえば、点を凝視する、決まった音楽を聴く、などが挙げられます。プログラマの場合、決まった音楽を聴きながら開発を始め、そのまま自然に集中モードに入っていくイメージになります。

事前動作自体は自分にあったものであればなんでも良いですが、毎日行い、脳に覚えこませることが重要です。

締め切り効果

締め切りを明確にして時間制限を意識し、そこに間に合わせようとすることで集中力の向上を図ります。タスク管理と組み合わせると、最大限に効果を発揮するでしょう。プログラマの場合、「●●時にミーティングだから、それまでにシステムAの開発を終える!」という形で締め切りを明確にしてから開発を始めるといったイメージになります。

労働生産性の計算方法

労働生産性を計算する方法は、とてもシンプルです。

得られた生産物を、算出したい分母で割ることで、一人当たりや、時間ごとの労働生産性を算出することができます。

物的生産性の計算式
物的生産性(量/人)=生産量/労働投入量(対応社員数など)

付加価値生産性の計算式
付加価値生産性(円/人)=付加価値/労働投入量(対応社員数など)

生産量あるいは付加価値を、人数や時間で割ることで、指標に沿った労働生産性を算出できます。

たとえばITの現場であれば、利益に対して現場の人員がどれくらい労働生産性に寄与しているのかを算出することで、付加価値生産性の向上に必要な度合いが明確化されます。

実際に労働生産性を計算してみよう

では実際に労働生産性の計算を行ってみます。

仮にシステム開発をしている現場の人員が3人で、その3人が合計で12個のモジュールを開発した場合の物的生産性は次のようになります。

物的生産性(個/人)=12個/3人=4

この場合、物的生産性は4(個/人)となります。

では、付加価値生産性の場合どうなるでしょうか。

上記のシステム開発をしている現場の人員が3人の売上総利益が¥600,000とした場合の付加価値生産性は次のようになります。

付加価値生産性(円/人)=¥600,000/3人=200,000

上記の状況では、付加価値生産性は200,000(円/人)となります。

今後ますます労働生産性が重要になる

今後ますます人材不足が加速するIT業界において、労働生産性の向上は必須となります。

労働生産性を向上するには、タスク管理や集中力といった部分で工夫すること、また、エンジニアであればスキルアップすることも有効な手法となります。

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(2019年10月現在)

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